嘘と正義と、純愛と。

あの人……私に呆れてああいうことを言ったのかな。
私だって、助けを求めようと努力はしてたのに。

……それでも、あの人は私を救ってくれたことには変わりない。

「野原さん。もう朝の時間終わりましたよ?」
「えっ。あ、ごめん!」

もう何度も、あの深い色の瞳をした男の人を思い出してしまう。

どうかしてるよ、私。
きっと、あまりに非日常的な出会い方をしたから。
それでこんなに強烈に印象付いているだけ。

このよくわからない気持ちも、時間が経てば、落ち着くはず。
気を取り直して椅子に腰を下ろすと、目の前に人の気配を感じた。

「いらっしゃいませ」

角度に気を付けながらお辞儀をして、口角を上げて顔を上げる。
そこには、ピシッとしたスーツを着た、若い男の人がいた。

うわ、なんかスーツが似合いすぎて目が離せない……。

そんなことを思ってしまうくらいに、その人はスタイルが良かった。
身長もあって、すらりとしていて。さらに、男の人なのに顔も小さく、ちょっとしたモデルのようにも見えたりして。

清潔感のあるストレートの黒髪はサラサラ。
横分けの髪を後ろに流し、目元は品のあるスクエア型の、緩やかなカーブを描くフレームのメガネ。
キリッとした眉と、メガネの奥にある瞳は爽やかさが感じられる。

「初めまして。S・Aコンサルティングの斎藤(さいとう)と申します」

スッと差し出された名刺を、反射で受け取りながら文字を追う。

斎藤……(りく)

無意識に名前を心の中で読み上げると、正面の斎藤さんが続けた。