部屋に入った私は、脱力してベッドにへたり込んだ。

覚悟していたような事態にならずに済んで、本当に助かった。
絶対、修羅場と化していたはずの状況を、一転させてくれた。

ポスッと仰向けに寝転がり、蛍光灯を見つめる。

狙ったわけじゃない。でも、私が間違って電話してたから、助けてくれたんだよね?

今日の出来事を回想しながら感謝していると、疑念が湧いてきた。
それも、ひとつじゃない。ふたつも、みっつも。

私が誤って斎藤さんにコールしちゃったとして……あんなすぐに、田中さんって人が来てくれるなんて、おかしくない?
正確な時間は正直覚えていられるほど余裕はなかったけど、正味3分とかそこらしかなかった気がする。

それに、田中さんが現れた時にも思ったけど、どうしてあの場所がわかったの?

助けてもらったことは紛れもない事実だけど、それに関する斎藤さんや田中さんの動きが不可解すぎて不信感が湧く。

なんだろう。なんで、いつもタイミングよく……。

斎藤さんと出会ってからのことを思い出して首を捻る。
痴漢も浮気現場も、本当にただの偶然だったかもしれない。この二件に関しては、そう思える。
だけど、今日の件に関しては、偶然的要素って言ったら、私がたまたま通話ボタン押してしまったことだけで。

徐に起き上がり、カバンからスマホを取り出し、ホーム画面に切り替える。
発信履歴には、やっぱりあの時間に掛けた履歴は残ってるから嘘じゃない。

悶々とひとりで考えても、当然答えは見つからない。
すると、私は無意識に、そのまま思考を別の方向へと切り替えてしまっていた。

「……仕事仲間」