さっき部屋に引き込まれた時とは比べものにならないくらい強い力で手首を掴まれた。
思わず抵抗するように重心を後ろにかけたものの、簡単に前のめりになり、よろけてベットに手をついてしまう。

焦って振り向き顔を上げた時には、眉を吊り上げた広海くんが見下ろしてた。

「……あ」

ガクガクと身を震わせ、怯えながら声を上げると、両手を広げて目の前を阻まれる。
そのまま片手で強引に顔を押さえられると、愛もなにもない、ただ乱暴なだけのキスをされた。

強引に重ねられ、窒息させようとしてるんじゃ……って思ってしまうくらいに息苦しい。

「んぅ……ぃや――!」

全力で体を突っぱねて、一瞬唇が離れた時に声を出した。だけど、完全に逃げられるまでには至らなくて、結局また口を塞がれる。

やっぱりこうなるんだ……! 怖い……! いやだ!

口を固く閉じ、顔を背ける。
広海くんは、それを追いかけて、こじ開けようと力づくで唇を割ろうと試みてくる。

「んーっ! んんん……ぁ、助け、てっ! ひゃっ!」

無意識に助けを口にした私に完璧に怒ってしまった彼は、両手を捻り上げ、ベッドに縫い付けるように押さえる。
もう完全に捕らえられてしまったことを理解すると、抵抗する力が出なかった。
広海くんは目に涙を溜めた私を見下ろして、恐ろしく低い声で言った。

「誰も来やしねーよ。ここは、俺と茉莉だけの家だからな」

広海くんの言葉と冷たい笑顔に背筋が凍る。
吊り上げた口の端を薄目で見て、『もうダメだ』と、いつものように心を閉じかけた時だった。

「お取込み中すみません。ちょっとお邪魔させてもらいますね」

私たち以外の声が割り込んできたからか、思わず広海くんは仰け反った。
私も驚いて体を起こし、衣服の乱れを直しながら玄関へと目を向ける。

……だ、誰?