か、勘付いちゃったかな?!
私がこれから広海くんの家に行こうとしてること。
ただでさえ緊張しすぎて神経が昂ぶってるのに、勘のいい相手に通じるような嘘なんか……!

バクバク煩い心音の中考えている時に、斎藤さんの顔を見てふと頭を過る。

この人になら……今から私がしようとしていることを話してもいいのかな?
助けてくれなくてもいい。ただ、苦しいくらいにひとりで抱えているこの気持ちを聞いてくれるだけでいい。

そうしたらきっと、不安や恐怖が少しは薄れて、立ち向かうことが出来る気がする。

そんな考えに行き着いた私は、口を小さく開いて声を発そうとした。
しかし、そのタイミングで斎藤さんが手を下ろして「ふっ」と笑い、口を開いてしまう。

「んー。まぁ、そう言ったらそうか。仕事以外はオドオドしてるしな」

完全にタイミングを逃し、唇をもう一度引き結ぶ。

「失礼します」

懸命に笑顔を浮かべながら、会釈をして踵を返した。

ダメだ。なに、土壇場になって誰かに頼ろうとしてるのよ。
大体、今まで誰にもそういう話も相談もしたことないくせに、直前になって怖くなってきたからって都合良すぎだよ。

自分を戒めるように叱咤して、裏口へと歩き進めようと一歩踏み出す。
すると、スマホを持つ右手首をおもむろに掴まれ、後ろを振り返った。

「な、なんですか?」