嘘と正義と、純愛と。

「え? 常識を超える束縛ってことですか? どうかなぁ。そもそも、(はるか)はそういう男の人じゃないし」
「遥、っていうんだ。東雲さんの好きな人」
「あ……。すみません、つい……」

東雲さんが照れてる! あの、どこかクールな東雲さんが!

私のように思い切り照れていたわけじゃないけど、薄らと頬をピンク色に染めた彼女は本当に可愛い。
今の表情を世の中の男の人に見せたなら、大半は好きになっちゃうんじゃないかなと思うほど。

同性の欲目じゃなくて、客観的に見て思った私は、思わず零していた。

「東雲さんなら、すぐに両想いになれるんじゃない……?」

今の顔で、その意中の人に甘えた声を出せばイチコロだよ!

恋愛が得意じゃない私でも自信を持ってそう思えたから言ったのだけど、東雲さんは曇った表情のまま眉を寄せる

「……そうでもないんですよ。ジャマな相手もたくさんいますし」
「えっ」

こんな可愛い東雲さん相手でも難しいことってあるんだ。

信じられない、と目を丸くして彼女を見つめると、謙遜というわけでもなさそうで、私は言葉を失った。
すると、遠くに視線を向けていた東雲さんが、パッと私に顔を向けていつもの淡々とした口調に戻る

「あ。さっきの話の続きですけど。私なら、そういう男の人は無理ですね。そもそも、そういう人なんて好きになりません」
「あ……でも、ほら、よく付き合ってから色々わかることとか」
「でも、付き合う前に、なんとなく気付く気がしますけどね。まぁ仮に、付き合っちゃったあとだったら、すぐに別の人捜します」

ああ。東雲さんをすごいと思うのはこういうところかもしれない。
自分に自信を持っていて、信念を曲げないような、芯のしっかりとした女の子。
それはきっと、生まれ持ったものだけじゃなくて、彼女が今まで努力してきた結果、身についたもの。

逃げずに生きてきた証拠で、それは今の私にはないものだ。