もう一度、掛けてみたらはっきりとわかる。
この番号の主が、見知らぬ宅配便の人なのか、あの彼なのか。

人差し指を宙に浮かせながら、しばらくそのまま迷っていたけれど、結局私はホームボタンを押して携帯をベッドに放った。

だめだ。勇気が出ない。
電話を掛けて、出た相手が斎藤さんじゃなかったとしたら……？
そう考えただけで、画面に触れることが出来なくなった。

『なにかあったら、いつでも連絡していいから』

だって、別人だったのなら、彼のその言葉が嘘になる。
その場限りだったのだとしても、それだけで支えてもらえそうだから。

本当の私は、こんなにも不安で仕方なかったんだと、今さら気付いた。
だからこそ、あの言葉がもしも嘘だったと明白になってしまったら、きっと私は心が折れてしまいそうだ。

本当に彼の腕の中に逃げようだなんて考えはないけれど、お守りのように私に力をくれるものになりそうだから。

密かに胸の奥でそんなふうに頼るくらいなら、大丈夫だよね？
心の中でだけ。たまに思い返して勇気をもらうだけだから。
それなら、広海くんもイヤな思いはしないし、なにも問題ないはず。

そう結論付けると、私はもう一度スマホを拾い上げ、指を画面に滑らせた。

【カエル急便】

あの番号を、そんな名称で電話帳に登録した。

それは、私だけの秘密の番号。