嘘と正義と、純愛と。

目の前の男が手にしているものを確認して、カタカタと震える。
私の携帯と、斎藤さんのメモだ。

私の携帯から、その番号に今掛けてるっていうの……?

静かな部屋に遠く聞こえる呼び出し音。
その回数が増える度、『そのまま出ないで』と強く念じる。

もうかなりしつこく鳴らしている電話に、広海くんも根負けしたように耳から携帯を離しかけた、その時――。

『はい』

微かだけど、声が聞こえた。
男の人の……斎藤さんの、声だと思った。

血の気が引く思いで広海くんを見つめる。
彼は一瞥するように私を見た後、ただ黙って電話相手の出方を窺った。

どうしよう。

何度もそればかり心で呟くけれど、どうしようもないんだ。
広海くんに怒られて、それからまた、束縛が厳しくなるかもしれない。

でも、そんなこと、別に今だけのことじゃなかったのに、どうしてこんなに……。

がっかりとした感情に似たような……悲しいような気持ちになるんだろう。

そんな疑問が過った時に、電話口からまた斎藤さんであろう男性の声がした。さっきのようなひとことならなんとなく聞き取れたけれど、会話のような長い言葉だと聞き取れない。

電話の向こうでは何を話しているのか耳を澄ませていると、広海くんが拍子抜けするような声を上げた。