嘘と正義と、純愛と。

思わず声を上げてしまったのは、完全なる失態。

「茉莉。これはなんだ?」

声を出さなくとも見つかってはいたけれど、その一言のせいで、〝やましいこと〟だと思われるのは確実だ。
じりじりと壁に詰め寄られ、逃げ場がなくなった時に、真ん前に斎藤さんの連絡先が書かれたメモを突きつけられる。

「男、だな?」

もう、だめだ。
弁解する勇気も、わかってもらえる自信もない。

諦めた私は、何も答えることが出来ずに目を逸らす。
すると、広海くんは私の髪を乱暴に掴んで俯いていた私の顔を上向きにさせた。

「いつも言ってるよな? 俺以外のヤツと話するんじゃねぇって。番号とかもらってるんじゃねえよ!」

バシッと左頬を平手で殴られて、一瞬意識が飛ぶ。
そのせいで、気を張っていたものが抜けてしまって、ぼろぼろと目から涙があふれ出た。

「なに泣いてんの? 自分が悪いクセに。そうだろ?」

もうどうにも自分じゃ制御が出来なくて、しゃくりあげるように声を上げた私に、広海くんは強く髪を引っ張って私に耳打ちする。

「声、出すなよ」

ひどく低い声で釘を刺されると、髪も腕も解放された私は壁に寄りかかったままずるずるとへたり込んだ。
いつもこれが始まるときには、私は心をからっぽにする。

痛みも悲しみも、なにもかも感じなくて済むように。

虚ろになった私の耳に、少しして聞こえてきたのは遠くから聞こえる電話のコール音。
ハッと現実に引き戻されて、私の前でしゃがみ込んでいる広海くんに焦点を合わせる。
すると、彼はニヤッと片方の口元だけ引き上げて笑った。

まさか……うそでしょ?