私は目的駅で下車してアパートへ急ぐ。
頭の中はほぼ広海くんのことでいっぱいだったけど、ほんの少しだけ、斎藤さんを思い出して、彼のくれたメモの入ったカバンを強く握り締めた。
インターホンを鳴らして、恐る恐るドアノブを回す。
静かな気がするけど、寝ちゃったりしてるのかな……? メールの返事もなかったし……。
息を潜めてドアを引くと、鍵はかかっていなくて、ゆっくりと中を覗くように開けた。
たまに玄関で立って待ってることもあるから緊張して開けたけど、今日は広海くんの姿が見当たらない。
無意識にホッとして玄関へと踏み込みドアを閉めると、壁の死角からスッと広海くんが現れた。
「きゃっ……あ、び、びっくりした」
広海くんは無言で私に近づいてくると、ひゅっと右手を伸ばしてきた。
私は反射的に目を瞑って、両腕で顔を覆うように身を竦めた。
――カチャン、と耳に届いた音で、広海くんはただ鍵を掛けるだけのためにその手を伸ばしたのだと理解する。
固まったままの私は、ゆっくりと両腕を下ろして目の前にいる広海くんに目を向けた。
視界に映ったのは、ニッと口の端を上げた広海くん。
笑い掛けてくれたことに一気に心を許し、顔を晒すと、直後、食い込むほどの力で腕を引っ張られる。
「いたっ……やめっ」
「おせーんだよ! それなのに、連絡がメール一回でしかもそれが駅に着いてからっておかしいだろ!」
「ごめ……走ってたから、とりあえず駅に着いたらって思って」
まだ癒えてない、いつかも覚えてない腕の痛みに泣きそうになりながら、許してもらえるように必死に謝る。
でも、頭に血が上った彼が、すぐに冷静になってはくれないこともわかってる。
部屋へ引き摺られるようにしていくと、さらに腕を強く掴む広海くんが鬼の形相で私を見下ろす。
頭の中はほぼ広海くんのことでいっぱいだったけど、ほんの少しだけ、斎藤さんを思い出して、彼のくれたメモの入ったカバンを強く握り締めた。
インターホンを鳴らして、恐る恐るドアノブを回す。
静かな気がするけど、寝ちゃったりしてるのかな……? メールの返事もなかったし……。
息を潜めてドアを引くと、鍵はかかっていなくて、ゆっくりと中を覗くように開けた。
たまに玄関で立って待ってることもあるから緊張して開けたけど、今日は広海くんの姿が見当たらない。
無意識にホッとして玄関へと踏み込みドアを閉めると、壁の死角からスッと広海くんが現れた。
「きゃっ……あ、び、びっくりした」
広海くんは無言で私に近づいてくると、ひゅっと右手を伸ばしてきた。
私は反射的に目を瞑って、両腕で顔を覆うように身を竦めた。
――カチャン、と耳に届いた音で、広海くんはただ鍵を掛けるだけのためにその手を伸ばしたのだと理解する。
固まったままの私は、ゆっくりと両腕を下ろして目の前にいる広海くんに目を向けた。
視界に映ったのは、ニッと口の端を上げた広海くん。
笑い掛けてくれたことに一気に心を許し、顔を晒すと、直後、食い込むほどの力で腕を引っ張られる。
「いたっ……やめっ」
「おせーんだよ! それなのに、連絡がメール一回でしかもそれが駅に着いてからっておかしいだろ!」
「ごめ……走ってたから、とりあえず駅に着いたらって思って」
まだ癒えてない、いつかも覚えてない腕の痛みに泣きそうになりながら、許してもらえるように必死に謝る。
でも、頭に血が上った彼が、すぐに冷静になってはくれないこともわかってる。
部屋へ引き摺られるようにしていくと、さらに腕を強く掴む広海くんが鬼の形相で私を見下ろす。



