嘘と正義と、純愛と。

淡々と指摘をしてくる彼に、唖然として何も言えずにいた。

スクエアのメガネを掛けて、ピッとしたスーツを纏っているのは、紛れもなく斎藤さん。
だけど、今日まで接してきた彼とは別の人に感じるくらいに、雰囲気が違う。

お昼前に合った斎藤さんは、物腰が柔らかくて、丁寧な印象だった。
でも、今目の前で私を見ているのは……?

太腿(そこ)の痣も、ひとつじゃなかった」

射るような視線で、鋭い言葉を突きつけるこの人は、まるで別人。
……なのに、どこかで会った気がする。

ぼぅっと斎藤さんの顔を見て考えていたけれど、ハッと我に返って目を逸らす。

「こっ、これは! じ、自分のせいなんです……!」

嘘を吐くとき人の目を見れないっていう、典型的な人間だ、私。
視線を泳がせながら、誤魔化しきれない震える声で答えると、斎藤さんはくしゃりと自分の髪を掻き上げて渋い顔をした。

「なんでそんなに頑張るんですか?」

『なんで』……?
なんで、って。だって、私みたいに何も取り柄もない人間は、少しでも頑張らないと、認めてもらえないから。

頑張るのをやめたら、誰にも必要としてもらえなくなりそうだから。

自分の弱い部分を突かれてしまって、うまく笑うことなんかできない。
だからきっと、すごく歪で、もしかしたら泣いてしまいそうな顔をしてしまっていたのかもしれない。

そんな微妙な表情のまま、彼と向き合ってしまった。