「お疲れ様でした」
それから仕事に専念して、雑念を思い返すこともなく終業時間を迎えた。
いつものように、他の同僚が更衣室に向かう間も、丹念に受付回りのチェックをして、時間差で後を追う。
従業員用のエレベーター前に辿り着くと、先にみんなが乗ったのを示すように、上向きのランプが点灯し、上階を目指していた。
ホッと息をついて上行きのボタンを押すと、後方の壁に寄り掛かる。
透明の私物バッグに何気なく目をやると、なんとなく携帯が気になって取り出した。
昨日の今日だし……広海くんから連絡は来てないとは思うけど。
……でも、もしかして、来てたらどうしよう。
一瞬、ぶるりと悪寒に似たものが全身を走る。
なぜかドクドクとうるさい心臓を鎮める前に、携帯のホーム画面をチェックした。
【すぐに来い】
通知表示のたったそれだけの一文に、ゾクリとして一気に焦りが出てくる。
カチカチカチッと今押したばかりのボタンを何度も押して、そわそわと落ち着きがなくなって行く。
なんだろう? 私、何かしちゃったかな? 昨日、ちゃんと書置きして出てきたし、朝は何も連絡なかったし、大丈夫だと思ったんだけど……。
思い当たることを必死で考えてみても、ピンとくることは何もない。
そうこうしている間に、エレベーターがやってきて、私はそれに飛び乗った。
目的階について、まだ完全に開いてないエレベーターのドアを摺り抜けるように降りると、小走りで女子更衣室に入る。
いつもならゆっくり歩いていくと、大体の社員が着替え終わって出てくる頃だけど、今日はまだ着替え始めくらいだ。
だけど、あのメールを見ちゃったからそんなこと気にしてられない……!



