「あゆちゃんのお母さんいらっしゃいませんかー?」

すれ違うお客さんに尋ねるように聞いて回るけど、反応がなくて溜め息を吐いた。

だめだめ。こういう何気ないところで迷子の子は不安になるかもしれないし。
私はニコニコと対応してなくちゃ。

自分を戒めて笑顔を作り、もう一度あゆちゃんと視線を合わせる。

「お母さん近くにいないみたいだから、迷子センターで呼んでもらおうか。おもちゃもあるし、迎えにきてくれるから大丈夫だよ」

私の言葉なんてきっと理解してないとは思うけど。
でも、だからって蔑ろに無言で連れてくとか出来るはずないし。

そうして5階にある迷子センターを尋ねると、ちょうどあゆちゃんのお母さんが探しに来ていたようで、あゆちゃんは我慢していた涙をまた流してお母さんに駆け寄った。

「すみません! 上の子に気を取られていたら……〝まゆ〟! よかった!」

お母さんも心底安心したように、眉を寄せて泣きそうな顔で抱きしめる。

ちゃんと心配して探してくれるお母さんでよかった。

「そっか。まゆちゃんだったんだね。ごめんね。私、お名前間違えて探してたね」

まゆちゃんの頭を撫でて笑い掛けると、お母さんの後ろに隠れてしまう。
さっきまで手を繋いでくれていたのに、と少し寂しい気持ちになっていると、お母さんが「ありがとうは?」と促す。

お母さんの足にしがみついたままのまゆちゃんは、私をジッと見つめた後に、小さな声で「ありあと」と拙い言葉で言ってくれた。