嘘と正義と、純愛と。

「好きだ。茉莉なら信じてみようと思えたし、また信じてくれる気がした」

その言葉は想像以上にうれしいもので。
単に、自分を選んでくれたという喜びだけじゃなくて、私と同じ気持ちだという一致の喜び。

〝もう一度、信じたい〟という思い。

「本当、自分でも勝手なこと言ってると思う。だけど、これがきっと俺なんだ」

眉を寄せ、小さく吐いた一弥さんは、まるで自分に語り掛けるように静かに続けた。

「父も祖父も警官で、俺自身もそうだった時期があったんだ。責任感のある任務で大変だったけど、サクラの代紋に恥じない仕事をしていたと自負している。でも、その結果、常に内外部かかわらず人を疑って動いて、気づけば神経がすり減っていた。天職だと思っていたのに、向いてなかったんだな」

苦笑する一弥さんを見て、私はきゅっと眉根を寄せて首を横に振った。

向いてない、とかそんな単純なことじゃないと思う。
もっと、深くセンシティブな理由だって、私は感じる。

「そのうち、個人で他人と深く関わるのに慎重になっていた。そのくせ、仕事は結局似たようなものを選んで……」

今まで見てきた一弥さんは、いつでも自信があるような振る舞いで、無敵なヒーローみたいな印象だった。でも、今目の前に映るのは、迷いながら悩んでるような、ヒーローとはかけ離れたもの。

たくさんのことを聞きたい気持ちになったけど、そんな彼の本当の声を聞いてあげたくて、私はジッと彼の顔を見つめ続けた。

「君のこと利用して傷付けたってわかってるのに、自分の気持ち抑えきれなくて。こうして強引に引き寄せて……。けど、まだどこか躊躇して……勝手な男だ」

一弥さんのそんなたどたどしい口調は初めてで、それを目の当たりにした私は無意識に涙がポロリと滑り落ちた。

その理由は上手く説明できないけれど、ひとつ言えるのは悲しみの涙ではないということ。
もっと、温かい気持ちから生まれた感情表現。

ようやく本当の彼と出逢えた。
名前も、心も、過去も、現在も。全部、本当の彼を見せてくれたんだよね?

その彼と、両想いっていうのは嘘でも夢でもない、現実のことなんだよね……?

瞬きもせずに一弥さんを見る私の目からは、はらはらと涙の粒が零れていく。
そんな私を見た彼は、目を大きく見開いて絶句していた。そして、少ししてからゆっくりと形のいい唇を開く。

「茉莉って、今まで色んな場面に直面してきた姿みたけど、一度も泣いてなかった気がする。……それなのに、今、こんなことで泣くなんて」