嘘と正義と、純愛と。

あれだけ自分の考えや思いを伝えることが苦手だったのに、嘘みたいにすらすらと口から零れ出る。
迷ってなんかいられない。奇跡のような再会(いま)を逃したら、次なんてないかもしれないって身に染みてわかったから。

「絶対に、またあなたに会いたかった。会ったらなにから伝えようって、ずっとずっと考えてた」

だから、恥ずかしがったり、後先考えたり、そんな概念全部捨てて。
全身全霊で、今の自分でぶつからなければと自然と思える。

「私は、あなたが好きです」

真っ直ぐと目を逸らさずにいられるのは、あなたと出逢った私だから。
生まれて初めてかもしれない、こんな素直な告白に、心臓はこれ以上になく騒いでる。

彼の反応が怖いけど、逃げようとは思わない。
ジッとその黒い瞳を見つめると、少し揺るがせた目に私を映し出して口を小さく開いた。

「でも……」
「あなたの名前がわからなくたって、どんな仕事をしてたって。きっと、私はあなたを好きになる……何度でも」

都合のいい心だと思われるかもしれない。
それでも、今の私は心から偽りなくそう思って言えるから。

すると、一度視線を落とした彼は、窺うような目を私に向けなおして言った。

「騙してたのに……? それでも俺を許せる? 信用できる?」

確かに、普通ならあんなふうに嘘を吐かれていたとわかったら、もう一度心を開くには抵抗があるかもしれない。
でも、やっぱり私の中であなたは特別だ。

それは、無意識にあなたと過ごしてきた短い時間の中で、端端に優しさを感じていたからかもしれない。

「たとえば、会えずにいた時の切なさとか、会えた時のうれしい気持ちとか。そういうもの全部、頑張って伝えたいって思える相手はあなただけだから」

今思い返せば、何度か彼の〝本心〟を見たことがある気がする。
その時の彼は、私に対しての罪悪感や、自分の思いとは裏腹な行動をしなければならないことに苛まれていたのか、目に苦渋の色を滲ませていた。

それと類似した顔で、彼はまた私を抱きしめる。

「勝手でごめん」

耳元で聞こえる掠れた声に、無言で小さく頭を横に振った。