私はきゅっと口を結んでゴミを拾い続ける。
すると、横から「おかわり」という声が聞こえてホッとした。

「あ、うん。待ってね」

急いで手を洗って、茶碗を受け取りに行く。
それに炊き立てのご飯をよそうと、急いで広海くんの元へと持って行った。

「はい」
「……茉莉は?」

テーブルの向かい側に座った私に、穏やかに尋ねた広海くんは、いつもの広海くんだ。
そう。本当は優しい人だもん。
さっきのは……そう。お腹空いてて苛々してたんだよ。誰だって苛々することあるよね。

「あ、うーん。広海くんが食べてからでもいいかな」
「ほら」

遠慮して肩を窄めた私に突き出された箸。
そこにはハンバーグが刺さってて、私は躊躇いながら小さく口を開いた。

与えられたひと切れのハンバーグ。
それだけで、作ってよかったって思えてしまう。

結局、私の分のご飯はほとんどなかったし、疲れ過ぎて食欲もわかなかったのをいいことに、そのまま後片付けをして落ち着いた。

ふと広海くんを見れば、シングルサイズのベッドで横になって雑誌を眺めてる。
なんとなく邪魔したくなくて、声を掛けずに静かに腰を下ろそうとすると、広海くんの目が私を捕えた。

ギクッと体を僅かに強張らせたものの、そんな心配なんかいらないような優しい声で、広海くんは私を手招きした。

「茉莉」