「いいからってなにがいいワケ?」
突然割り込んできた声を、私は知ってる。
真横から伸びてきた手は男の腕を引きはがし、そっと私を引き寄せた。
その声、この温度、仄かに香る匂い。
まるで電流が走るような感覚と同時に、信じられないという思いで上手く視線すら動かせない。……それは、息の仕方も忘れてしまう程。
その間にも、淡々として言葉を繋げ、相手の男を追い詰める。
「同意なしで触ってたみたいだけど、そのままあのワゴンにでも連れ込もうとしてた? そういうの、迷惑禁止条例反に該当しそうなもんだけど」
「め、迷惑、条例……?」
「とりあえず、現行犯で通報しとく? ここから一番近い交番は約三百メートル。まあ、すぐ駆けつけて来れるな」
絡んできた男はオドオドと口を開くと、追い打ちをかけるように携帯を取り出す動きをされて、指摘されたワゴン車に飛び乗って去って行った。
とりあえず変な男から免れたと、ひとつ息をつきたかったところだけど、そんな場合じゃない。
今もふわりと掴まれてるこの手。
ゆっくりとその手を辿るように、視線を上へと向けていく。
黒のスーツの先に見えた顔は、やっぱり深く綺麗な色をした瞳だった。
「い、ち……」
「確かに助けは声に出せって言ったけど」
見上げた先には、ぼんやりとした月明かり。
その魅惑的で柔らかな光を背負う彼の顔は、一度見たことのある表情だった。
「そんな顔してたら、俺以外のやつが寄ってくるだろ」
キリッとした眉をほんの僅かに寄せて、怒りとはまた少し違うけれど、真剣な思いを映している目を真っ直ぐとぶつけてくる。
その少し苦しげで困ったような怒ったような顔は、前に彼を庇って広海くんに殴られたあとと同じだ。
この人はきっと、自分が傷つくよりも人が傷つくのを見る方が、ダメージが大きいのかもしれない。
そんなあなたは、やっぱり優しい人。
「……私の前から消えたのに、助けてくれたんですね」
もしかしたら、それは私にだけじゃなくて万人に対するものかもしれない。
けれど、私の気持ちはその答えに左右されるわけじゃないから。
「うれしかった」
突然割り込んできた声を、私は知ってる。
真横から伸びてきた手は男の腕を引きはがし、そっと私を引き寄せた。
その声、この温度、仄かに香る匂い。
まるで電流が走るような感覚と同時に、信じられないという思いで上手く視線すら動かせない。……それは、息の仕方も忘れてしまう程。
その間にも、淡々として言葉を繋げ、相手の男を追い詰める。
「同意なしで触ってたみたいだけど、そのままあのワゴンにでも連れ込もうとしてた? そういうの、迷惑禁止条例反に該当しそうなもんだけど」
「め、迷惑、条例……?」
「とりあえず、現行犯で通報しとく? ここから一番近い交番は約三百メートル。まあ、すぐ駆けつけて来れるな」
絡んできた男はオドオドと口を開くと、追い打ちをかけるように携帯を取り出す動きをされて、指摘されたワゴン車に飛び乗って去って行った。
とりあえず変な男から免れたと、ひとつ息をつきたかったところだけど、そんな場合じゃない。
今もふわりと掴まれてるこの手。
ゆっくりとその手を辿るように、視線を上へと向けていく。
黒のスーツの先に見えた顔は、やっぱり深く綺麗な色をした瞳だった。
「い、ち……」
「確かに助けは声に出せって言ったけど」
見上げた先には、ぼんやりとした月明かり。
その魅惑的で柔らかな光を背負う彼の顔は、一度見たことのある表情だった。
「そんな顔してたら、俺以外のやつが寄ってくるだろ」
キリッとした眉をほんの僅かに寄せて、怒りとはまた少し違うけれど、真剣な思いを映している目を真っ直ぐとぶつけてくる。
その少し苦しげで困ったような怒ったような顔は、前に彼を庇って広海くんに殴られたあとと同じだ。
この人はきっと、自分が傷つくよりも人が傷つくのを見る方が、ダメージが大きいのかもしれない。
そんなあなたは、やっぱり優しい人。
「……私の前から消えたのに、助けてくれたんですね」
もしかしたら、それは私にだけじゃなくて万人に対するものかもしれない。
けれど、私の気持ちはその答えに左右されるわけじゃないから。
「うれしかった」



