嘘と正義と、純愛と。

頭の奥で、彼の言葉が低く響いて私の心を大きく揺さぶる。
苦しい。もどかしい。諦められない。上手くいかない現状や、上手くできない自分に苛立ちすら感じる。

こんなときでも、声を上げたら助けてくれたりする……?

たぶん、前までの私なら声なんかひとことも出せないまま。
冷静な頭であれば、〝そんな都合のいいことあり得ないでしょ〟と簡単に答えははじき出されるはず。

……けど、今の私はどれにも当てはまらないから。

「助けて……っ」

堪え切れなくなった感情に負けて、潤む視界を遮るように顔を両手で押さえながら嗚咽交じりに漏らす。
駅の出口でしゃがみこみ、唇を強く噛みしめて胸の痛みに堪えていると、指の隙間から白いスニーカーが映り込んできた。

「なにしてるの?」

同時にその足の主から声を掛けられて、私の思考は停止する。
バッと顔を思い切り上へ向けると、グレーのパーカーに手を突っ込んだ見知らぬ男が私を見下ろしていた。

「えっ……いや、なんでもないです!」

ただのナンパだ……!

そう察した私は、素早く立ち上がり、その場を離れようとする。
だけど、この駅からは離れられない。人がいるところに……と思って周りを見たけど、22時近いし大きな駅でもないから人がいない。

プチパニックを起こしてる間にも、私を柱に追い込むように近づく男がやけに笑顔で話をする。

「ウソー。ここ最近いつもいるじゃない。声かけられるの待ってるんじゃなくて?」
「ち、違います!」
「いいから、いいから」

うそでしょ……! まさか、こんな人にここ数日の姿を見られていたなんて!

不運としか言いようのないこの状況を、どう回避したらいいのか。
さりげなく私の片腕を掴みながら、笑顔を絶やさずに男は自分のペースへと乗せようとしてくる。

すっぽりと掴まれる大きな手にぞわりと全身を粟立たせる。

どうしよう。なんかちょっとずつ引き寄せられてるし、いざというときに声も出ないし。
この震える手足で男の人から逃げ去る自信もない。

それでも素直についていくなんてまっぴらごめんだ。

そう思って、グッとなけなしの力を足に込めて引っ張られる力に抵抗した時だった。