「遅っせーんだよッ!」
「きゃっ……!」

玄関を開けてすぐに、胸倉を掴まれ乱暴に引き寄せられた私は、買い物袋ごと広海くんの足元に転んだ。

「ごっ、ごめ……買い物、近くのスーパー閉まってて、それで……いっ!」

震えながら説明する私は、容赦なく広海くんの大きな足で蹴飛ばされる。
体を丸めるようにして痛みに堪えると、それ以降同じように足蹴にされることはなく。

その代わり、耳が痛い、冷たい言葉が降ってきた。

「ったく。ホント、使えねーな!」

ガン!とゴミ箱に八つ当たりするように広海くんは派手に蹴倒す。
恐る恐る私は立ち上がり、よろよろとキッチンへと向かった。

なるべくすぐにできて、ハズレがないもの。
ハンバーグとちょっとした野菜をお皿に並べた私は、ゴロゴロとしてテレビを見てる広海くんの元へとそれを運ぶ。

小さな折り畳みテーブルの上に置くと、広海くんは体を起こした。

「あ、出来たよ。ごめんなさい、遅くなって」

愛想笑いにも似たものを浮かべて言うと、無言のまま彼はご飯をかき込み始める。
とりあえず口には合ったようだ、とホッとして、そのまま私はさっき散らかったゴミ箱のごみを拾い始めた。

カチャカチャと食べ進める音と、やたらと楽しげに笑い声がするテレビの音だけ。

広海くんの機嫌が直るまで。
それまでの辛抱。