パラパラとまだ人はいるから、それに紛れるように後をつける。

こんなことをして、私は何がしたいの?
でも、もう引き返せない。

『いいんじゃないですか? 好きなら徹底的に調べて、納得するくらいに行動すれば』

東雲さんの言葉を都合よく胸で反芻し、斎藤さんの背中を追う。

改札を出たところで斎藤さんは誰かを待っているようで、柱に隠れて様子を見ていると、一台の車がハザードランプをつけて止まった。

車?! もしかして乗って行っちゃうの? そんな……それ以上は私には無理だよ。
黒の軽自動車を見て愕然としている間にも、助手席側の窓が開かれてそこに斎藤さんが近づいていく。

やっぱりこんなことするんじゃなかった。

そう後悔しかけ、陰から見てみると、斎藤さんは車に乗らずに車に背を向けるようにして立っていた。

え? ただの偶然? 全く関係ない車だったの?

自分の早とちりかと思うと、また別の緊張が増してくる。
ジッと様子を窺うと、そこから動く気配を感じられない。

私は思い切って、大きく回りもう少し距離を詰めてみた。
さっきよりも斎藤さんに近くなった分、リスクは高くなったけど電話とかきたら声は聞こえそう。

「は? それ、本気で言ってんの?」

息を殺していた時に、吃驚した女性の声が聞こえてきた。

どうやら、車の中の人みたい……あ。もしかして。
ついこの間の場面がフラッシュバックされる。
あの時とは車は違うけど、そう思えばこの女の人の声、あの人っぽい。

ドキドキと緊張しながら耳を澄ませる。
すると、憤慨したように女性が続けた。

「せっかく問題ある元カレのおかげで信用得られて、動きやすい立ち位置獲得したっていうのに」