大体は毎日同じことの繰り返し。
お客さんを案内したり、落し物を預かったり、ベビーカーを貸し出したり。
ちょっと嫌な雰囲気のお客さんもいつものことだけど、今日はそんなお客さんが来てもそこまで引きずらなかった気がする。
仕事を終えた後に更衣室で一日を振り返ってはそう思う。
ボーッと着替えていると、はらりと制服のポケットから紙が足元に落ちた。
腰を屈めて左手で拾い上げる。
そっか。きっと、これが原因かな。
〝斎藤陸〟と書いてある名刺に視線を落として妙に納得してしまった。
朝からちょっと非現実的な、イイことがあったから。そのパワーで今日は乗り切れたんだ。
って、私には広海くんがいるのに。
これって浮気心? いや、違うよね。そういうのとはまた別の……。
まだ更衣室に2、3人残っている社員に変に思われないように、大きく首を横に振りたい衝動を堪えた。
その瞬間、カバンの中で携帯が振動して、びくっと肩を上げる。
ドクドクと心臓をならしながら、平静を装って携帯を取り出した。
【今日飲み会なくなった。メシ、作りに来て】
それは広海くんからのメール。
飲み会なくなったんだ。えっ、じゃあ急がないと! これから買い物して向かって、作って、ってしてたら、食べる時間遅くなっちゃうよ!
バッと掛け時計を確認すると、22時前。
私はいつの間にか更衣室で最後のひとりになっていたのをいいことに、堂々と着替えて帰り支度をした。



