嘘と正義と、純愛と。

なに、この状況。
広海くん、慌てすぎてて行動がおかしいよ。だって、私を盾にしたって、斎藤さんにとっては大きな打撃なんかないんだから。

どこか冷ややかにそんなことを思うと、信じられないくらいに熱い眼差しで、聞いたこともない、叫びに似たような斎藤さんの声が聞こえて一驚を喫する。

「茉莉っ! ちゃんと自分から望め!」

え? 自分から……?

斎藤さんの言葉で、ドクッと心臓が鳴る。
ついさっき、私は何かを諦めようとしたばかりだった。

私が、望むこと――……。

押さえこんだ気持ちが湧きだして、身体中を駆け巡る。
押し殺しかけていた感情が溢れ、目に涙を溜めて乞うように叫んだ。

「助けてっ……!」
「了解。ご希望通り、今すぐ助けてやる」

ニッと勝気に笑った顔をしたかと思ったら、瞬く間に距離を詰めて広海くんの手を捻りあげる。
自由になった私は、その隙にもつれる足でベッドから飛び降り、圧倒的優勢の斎藤さんの後ろ姿に目を丸くする。

ベッドにうつ伏せに押さえつけられている広海くんは、なんとか形勢を逆転しようと試みているみたいだけど、完全に斎藤さんの有利だ。
すると、広海くんは苦し紛れにペラペラと話し出す。

「かっこよく『助けてやる』なんつって、他の女にも同じようなこと言ってるんだろ。こんなんで、茉莉を自分のものにしようとしてんの? 俺と対してやってること変わんないだろ」

自嘲気味に笑いながら、限界まで顔を回して斎藤さんを見上げる。
広海くんの話は留まることを知らなくて、斎藤さんが黙っていることをいいことに続けていく。

「昨日の夜一緒にいた女。茉莉だって疑ってるし、あんたの信用なんてすぐになくなるんじゃない? そうしたら、あんたが茉莉を傷つけることになるんだ」

得意げな顔をして、斎藤さんを侮辱する広海くんに唖然とする。

「手、離せよ。不法侵入と暴力で訴えるぞ。なんなら、この荒行のこと、あんたの職場を探し出して報告したって」
「もういい! もう、やめて……」