嘘と正義と、純愛と。

逃げるなら今がチャンスかも。だけど、この手、どうする? こんな惨状を来訪者に見せたら警察沙汰になっちゃう。そんなことまでは望んでないのに。
でも、現実には部屋(ここ)は2階だし、玄関を通らなきゃ逃げることも出来ない

せっかくの好機なのにと思いながら、上半身だけを起こして試行錯誤する。
だけど、天は私に味方してくれなかったようで、縛られた縄はウンともスンとも言わない。

玄関の手前で広海くんはチラッと私に視線を送ってくる。
その目は、『騒ぐなよ』って脅してる目だ。

私が言うことを聞くと確信したのか、広海くんは玄関を開けて応対した、

「は、い……っお前!」

突然荒げた声に目を剥いた。
気になって玄関の方を見てみるけど、死角になっていて誰がそこにいるのかまではわからない。
ただ、広海くんが尋常じゃなく驚いているというのはすぐにわかった。

そして、その驚きの原因がなんなのか。
それは、次の瞬間にすぐに理解する。

「どうも。〝カエル急便〟ですけど」

私はその言葉を耳にして、目をこれ以上にないくらい大きく見開き、前のめりになった。

うそ……うそでしょ。
なんで、こんな時間に、そこにいるの――?

広海くんを押し避け、死角から顔を覗かせたのは、夢でも幻でもなくて、本物の……。

「……斎藤、さん」

呆然としながら、その名を口に出していた。
ありえないことが目の前で起こってる。

あまりに唐突な展開に、足は自由なんだから斎藤さんに飛び込んでいけばいいものを、それもせずに放心していた。
すると、斎藤さんよりも早く、広海くんが私に駆け寄ってくる。

私の身体を拘束すると、まるで人質のように扱って斎藤さんと対峙した。