嘘と正義と、純愛と。

「こちらの業務本部長の三木(みき)様から、依頼がありまして。貴社の様々な改善支援を行うことになり、まずはこちらの新宿のほうへ出向いてきたのですが」
「左様でございましたか」
「はい。それで、まずは事務所の方へご挨拶に伺いたかったのですが、案内をお願いしても?」

上品に口角を上げてニコッと笑顔を向けられる。
たったそれだけのことなのに、なんだか舞い上がってしまう。

「あ、は、はい。こちらです」

左手で通路を示しながら、受付カウンターを出る。
案内だから当然先導して歩かなきゃならないんだけど、すぐ後ろをついてきてる彼を意識してしまってうまく歩けてるかわかんない。

ドキドキとしながら、従業員用の扉を開けて中に入った。
そこは、店内の賑やかさが遠く聞こえて、いつも別空間のよう。
さらに奥に歩き進めると、エレベーターがあって、私は低い位置にあるボタンを押した。

エレベーターを待ってる時の沈黙って苦手だなぁ。

内心そわそわとしていると、運良く真っ直ぐと1階まできたエレベーターに安堵の息を漏らしてドアを押さえる。

「どうぞ」

斎藤さんを促すと、彼はぺこりと頭を下げて奥へと踏み込む。
私はそれを確認した後に、一緒にエレベーターに乗り込んで上部にある11階のボタンに右手を伸ばしかけた。

……痛っ。

腕を上げるとピリッとした痛みが電気のように走り、思わず顔を歪めた。
だけど、斎藤さんには背を向けてるし、表情まではみられてないはず。

私は何気なく、右手をゆっくりと下ろしながら、左手でボタンを押した。