「おい、できたぞ。起きろ。どうせ寝てねぇんだろ?」
「…なんでばれてんの。」
「当たり前だ。さっさと起きろ。」
「…名前、呼んで。」
「寝言は寝て言え。」
「寝てないから寝言じゃないよ。…名前、呼んでほしいなって。」
「持田、起きろ。」
「業務命令みたい。今、仕事中じゃないじゃん。」
「…下の名前で呼ばれたいなら、最初からそう言え、桜。」
低く、甘く響く声に、自分からねだったのに頭が沸騰しそうだ。どう考えたって、降谷の方がずるい。
「…た、立てなくなった。今ので。」
「意味わからん。ここでお姫様だっこなんてそんなうすら寒いもん、絶対しないからな。」
「…ちゃんと立つ、し。」
「いただきます。」
「あ、待って!」
容赦のない言葉に、容赦のない態度。でも、怖くはないし、信じられる。不思議なくらいに自然と。
「…いただきます。」
目の前に並ぶ、和食の朝食。こんなにきちんとした食事を目の前に、桜のお腹は正直に音を立てた。
「…昨日の夜、食ってなかったのか。」
「…泣いたし。」
「多く作りすぎたから、おかわりあるぞ。」
「朝は少食だもん。」
「だから太る。」
「太ってない!」
こんなテンポで会話のキャッチボールができる人は、多分いない。
「降谷さん。」
「なんだ?」
「…あたしを好きになる可能性は、ある?」
「…今は限りなくゼロ。」
「今はってことは、まだわかんないよね?」
自分からそんなことを言えるようになる日が来るなんて、思ってなかった。今がだめなら、もう未来も過去も全てだめだと思っていた。でも、そうじゃない。
今日がだめでも、過去のだめじゃなかった日は消えない。今は会えなくても、1年後には何事もなかったかのように笑い合えるかもしれない。あんなこともあったよね、なんて言えるかもしれない。
だから今は、少しだけ前を見て歩いてみたい。
「…言うようになったじゃねぇか。面白いな。」
降谷が小さく笑った。
「…なんでばれてんの。」
「当たり前だ。さっさと起きろ。」
「…名前、呼んで。」
「寝言は寝て言え。」
「寝てないから寝言じゃないよ。…名前、呼んでほしいなって。」
「持田、起きろ。」
「業務命令みたい。今、仕事中じゃないじゃん。」
「…下の名前で呼ばれたいなら、最初からそう言え、桜。」
低く、甘く響く声に、自分からねだったのに頭が沸騰しそうだ。どう考えたって、降谷の方がずるい。
「…た、立てなくなった。今ので。」
「意味わからん。ここでお姫様だっこなんてそんなうすら寒いもん、絶対しないからな。」
「…ちゃんと立つ、し。」
「いただきます。」
「あ、待って!」
容赦のない言葉に、容赦のない態度。でも、怖くはないし、信じられる。不思議なくらいに自然と。
「…いただきます。」
目の前に並ぶ、和食の朝食。こんなにきちんとした食事を目の前に、桜のお腹は正直に音を立てた。
「…昨日の夜、食ってなかったのか。」
「…泣いたし。」
「多く作りすぎたから、おかわりあるぞ。」
「朝は少食だもん。」
「だから太る。」
「太ってない!」
こんなテンポで会話のキャッチボールができる人は、多分いない。
「降谷さん。」
「なんだ?」
「…あたしを好きになる可能性は、ある?」
「…今は限りなくゼロ。」
「今はってことは、まだわかんないよね?」
自分からそんなことを言えるようになる日が来るなんて、思ってなかった。今がだめなら、もう未来も過去も全てだめだと思っていた。でも、そうじゃない。
今日がだめでも、過去のだめじゃなかった日は消えない。今は会えなくても、1年後には何事もなかったかのように笑い合えるかもしれない。あんなこともあったよね、なんて言えるかもしれない。
だから今は、少しだけ前を見て歩いてみたい。
「…言うようになったじゃねぇか。面白いな。」
降谷が小さく笑った。



