私ら彼に寄り添って、じっと瞳を見つめた。

私を見つめている。私がそこに映っている。

まるで、黒い鏡。

でも、それは死んでいる。

そして、私が殺してしまった。

お姉さんを演じたばかりに。

私が私じゃなかったばっかりに。

殺してしまった。

帰ってきてなんて、私自身に戻るからなんて言っても、もう遅い。

だから、ごめんねとも言わず、ありがとうとも言わず、彼にキスをした。

今度は、ちゃんと応えてくれた気がする。

ものすごく冷たかった唇が、さっきよりも心持ち、柔らかかった。

そして唇を話した私は、彼の瞳の中に、黒い鏡の中に、見た。


彼を見つめながら、

   、
自分の肩へ訊ねる。

「なによ……もしかしてアンタ、私についてくるの?」

肩の上、ついこの間まで妹がいたそこに、ほの白く透き通った、赤い頭の山久尚司がいる。

そこに、いる。

「言っとくけど私、走るとき速いわよ。――振り落とされないでね」

、      、
彼の瞳に映った彼は、いつも通りのニコニコとした笑みを浮かべて、応えてくれた。

だから思う。

彼はきっと、幻なんかじゃない。