「なんでわざわざあたしなの」

「おれ、入学式前に体育館に辿り着けなくて、うろうろしてたら先輩を見かけたんす。
それで道を訊いたら『急いでるのに面倒だなぁ』って」



覚えてないですか? と首を傾げられる。



言われてみれば……。

そんなこともあったような、なかったような。



んんん、と頭を捻る。



「忘れましたか」

「だな」



ひどいなー、と言う姿はそんなに気にしてなさそうじゃん。

まぁ別にどうでもいいよね。



「まぁ、それでおれは先輩に興味持ったんすよ」



にかっと華やかな笑顔。

無邪気で可愛くて、2・3年の間で人気が出てるのもわからんでもない。



好きとか騒いで巻きこんでさえこなけりゃいいのにな。



「もー、先輩ちゃんと聞いてくれてますかー?」

「聞いてない」

「聞いて下さいよ」



いや、だってなんかうそっぽいし面倒だし。

興味持った理由もだいぶふさげてんじゃん。



もう本当やめろ、あたしをからかうな。

心臓に悪くて、寿命が逆に伸びるぞ。