(失ってからじゃ遅い…そんなの分かってるさ)
自嘲的な笑みを浮かべると、河村は玄関のドアを閉めた。
フワリ。
「?」
ノブに光るものを見つけ、ふと眉根を寄せる。
「赤い…糸」
昨夜同様、触ると消えた《それ》に彼は、もしやと裕一郎の部屋のドアを開けた。
その瞬間、唖然とする。
(何だ、これは………?)
河村は思わずゴクリと唾を飲んだ。
そこには今までのものとは明らかに違う、長い糸が足元に落ちていたのだ。
これが裕一郎についているものだとしたら、本人が気付かない訳がない。
(あいつの身に何が起こってる?…こんな事を黙っているなんて、一体何を考えてるんだ!!)
そこでふと思い出す。
先ほどのキツく握りしめていた右手。
どう考えても、何か隠しているとしか思えない。
「くそっ!!」
河村は慌てて裕一郎の後を追った。
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