『百合へ



こんな手紙を書いても

君を悲しませるだけかもしれないね



でも俺は

この気持ちが

ただ海の泡として消えていくのだけは

耐えられなかったんだ



だからここに

俺の素直な思いを記させてくれ



そして 君に読んでもらえたら

俺はとても嬉しい




君のことを

もう一人の妹のようなものだと言ったが


すまない

あれは嘘だった



俺は君のことを

愛していた



君の素直でまっすぐで優しい魂を

心から愛していた




出来ることならば

戦争のない時代に生まれていたのならば


君と一生を共に過ごしたかった




でも それは叶わない夢だ




明日の十三時


俺は飛び立つ


そして 散る




俺は今

俺の墓場となる空を見上げながら

この手紙を書いている



百合の花が咲くあの丘で


君と語らったあの丘で



君の花の香りがする


甘い香りに 胸がいっぱいだ




君はとても純粋で 清らかで

まっすぐで 自分の気持ちに正直で


そんなところが俺は

愛おしくてたまらなかった




ああ 空が無性にきれいだ


君と見た あの時の星空と同じだ


無数の星が

空いっぱいに光り輝いている



あの空に 俺は散る


君のために



君という花が咲く

この世界のために




君の幸せだけを願っている


君の笑顔が輝きつづけることを






百合 百合 百合



会いたい




ついさっきまで会っていたのに


もう会いたい




こんなにも君が愛おしいのは

何故なのだろう





百合 生きてくれ



こんな時代に生まれてしまったことで

苦しんでいる君を見ているのは

俺にはとても辛かった




戦争は終わる


近いうちに 必ず終わる



だから 何としてでも

この戦争を生き抜いてくれ




それだけを

俺は今 願っている』