あたしは見送りの人波を掻き分けて、列の前に飛び出し、彰の姿を探した。





一機ずつ、特攻機が目の前を通り過ぎていく。




どの隊員も、本当に明るい笑みを浮かべていた。





隣にいたおばあさんが、





「なんと朗らかな………なんと勇ましい、あぁ、なんと神々しい……」





と呟いて、彼らに向かって手を合わせて拝み始めた。





「生き神さまだ………」





加藤さんの機が目の前を通った。




『一撃必沈』と墨書きされた日の丸の鉢巻きを額に巻いていた。





次に、石丸さんの機がやってきた。




見送りの列に向かって、いつもの弾けるような笑顔で手を振っていた。






そして、次に来たのは………






「………彰、あきらーーーっ!!」






あたしは声の限り、叫んだ。




届くか分からなかったけど、とにかくその名を呼んだ。






「彰! 彰! 彰!!」






周りの歓声やエンジンの音が、あたしの声を掻き消してしまう。




それでも、あたしは叫んだ。





大きく手を振って、彰、彰と呼んだ。





その声が届いたのかは分からないけど………彰の視線が、あたしの上にとまった。




驚いたように目を瞠ってから、彰は、あたしの大好きな優しい笑みを浮かべた。