その日一日、まったく仕事が手につかなかった。




彰のことばかり考えていて、ぼんやりしてしまい、ツルさんにたくさん迷惑をかけてしまった。



でもツルさんは何も言わず、ただあたしの頭を撫でてくれた。




その目に浮かんでいた悲しみの色は、きっとあたしと同じものだと思う。





店を閉めてから、あたしは部屋の片隅に座り込んで膝を抱え、明かりもつけない暗い部屋でぼんやりと考えを巡らせていた。





どうしたら、彰を行かせずにすむ?




どうしたら、彰の決心を揺るがすことができる?





考えても考えても、何も答えは出ない。




そもそもあたしは、彰が食堂に来てくれなければ、彰に会うことさえできないのだ。





焦りばかりが募る中、あたしは結局なんの行動も起こせないまま、一睡もできずに夜を明かした。