「―――ちょっと、百合! 起きなさい!」


ばしんと頭を叩かれて、あたしは唐突に眠りから覚めた。

顔をしかめて目を開ける。

母親の怒った顔が視界いっぱいに広がった。


あーあ、とげんなりする。

また怒られるのか………うざい。めんどくさい。


あたしはこれからの展開を予想して、うんざりしながら身体を起こした。

ちらりと外を見ると、すっかり暗くなっている。


「………ったく、あんたって子は………どうしてそうなの?」


母親はぶつぶつと文句を言いながら、化粧台の前に座り、いつものように真っ赤な口紅を塗りたくり、派手なアイメイクを始めた。

これから夜の仕事に行くからだ。


母親は昼間はスーパーのパートをしていて、夜は水商売の店で働いている。

昼のパートから帰ってくると、化粧を直して近所の繁華街のスナックに出かけていくのだ。


「こんな時間まで制服のままで寝こけて………宿題はちゃんとやったの?」