青江たちに何度もお礼を言い、
「お代はおまけしておきますね」
「いえ大丈夫です、きちんと払います」
「遠慮なさらないでください、良い古刀を見させてもらえたお礼ですから」
「いえ、そういうわけには……」
というやり取りをしばらく行って結局お言葉に甘えることになり、すっかり長居してしまった青江屋を出る。
太陽はもう沈み、西の空に名残惜しげに光が残っているだけで、あとは深い藍色が広がっていた。
「ごめん玖皎。すっかり遅くなっちゃった」
「何故謝る、おれの拵えを直すためにここまで出掛けてくれたんだろう。
文句なんぞあるか、むしろ感謝しているぞ」
「え、玖皎って感謝することあるんだ」
「おまえ、おれのことをばかにしているだろう」
「してないしてない」
拗ねたような玖皎の物言いに小さく笑い、思葉は自転車に跨って薄暗い道を走り出した。
ひんやり冷たい風が首元から髪に流れ通り過ぎていく。
いつの間にか残暑の厳しさはどこにもなくなっていた。
落ち葉が足元に重なり、木枯らしが吹き、指先がかじかむ季節はすぐ来てしまう。
寒いのは苦手なので憂鬱だ。



