店に入る前に約束した通り、玖皎はずっと静かにしている。
「ほう、この刃文は……」
鞘から抜いた刀身を眺め、淡雪のような刃文を見つけた青江が感心した声を出す。
やや細く眦の垂れた目に光が走った。
「こんなに大きな沸(にえ)が出てくるのも珍しいですけど、匂(におい)の部分もしっかり現れていますね。
それなりの美術価値はありそうですから、大切に扱ってあげてください」
「はい、もちろんです」
「梨子地肌に雉子股形の茎、雉子股形、佩表(はきおもて)に三条の銘、佩裏には銘なし……。
恐らくですが、これは三条宗近の息子か弟子の作品かもしれませんね」
思葉は青江の見立てを聞いて、それが永近が言っていたものとまったく同じであることに気付いた。
その晩のうちに調べようと思っていたが、太刀が喋ったことに衝撃を受けたせいですっかり忘れ去っていたのだ。
「あの、青江さん。どうしてこの作者が三条宗近の息子か弟子だと分かるんですか」
「三条宗近は、佩表には『宗近』と、佩裏には『三条』と銘をきるんです。
しかしこの太刀は佩表にだけ『三条』ときってあります。
平安時代の山城派の特徴が多くありますから、そういう見立てに至りました」



