「おや、めじろ屋の焼き菓子ですか」
「青江さんが好きだとおじいちゃんに教えてもらったんで」
「わざわざありがとうございます」
相手が誰であろうと、柔らかく丁寧な敬語で話すのが青江の特徴の一つだ。
これ以外にも他の人とは少し異なる特徴がいくつかある。
芸術家の類に振り分けられる人はそういうものだと思葉は考えているのでさほど気にはしていない。
青江に促されて、思葉は木戸を開けてすぐのところにある小さな座敷に通された。
ここより奥は店の裏側にある鍛冶場に続いていて、青江屋で売られている刀剣はすべてここで造られている。
今も作業をしているのか、焼いた鉄を叩く音が聞こえてきた。
ちなみに青江が玖皎の引き取り手となるのを断ったのは、自分の鍛冶場以外で鍛えた刀剣類は所持したくないという刀工の矜持のせいらしい。
「それで、満刀根さんがおっしゃっていた太刀というのは君が背負っているものですか?」
「はい」
青江と向き合って座り、思葉は太刀袋から玖皎を引き出して見せた。
刀工は眼鏡をかけ直して真剣な表情で玖皎を手に取る。
先に拵えをすべて点検し、思葉に一言断ってから刀装具を外していく。
永近よりも手際が良く、かつ丁寧な手つきだった。
やはりその道の専門家は格が違う。
思葉は身を乗り出すようにしてその鮮やかな手先を見つめていた。



