素直に返事をした玖皎を背負い直して、思葉は硝子戸に手をかけた。
建て付けが悪いのかこまの滑りが悪いのか、ろくに開かないところで止まる。
何とか戸を動かそうと悪戦苦闘していると、急に引っかかりが取れ、勢い余ってぱんと立枠にぶつけてしまった。
乱暴な開け方になってしまい思わず首をすくめて舌を出す。
ここが家だったら確実に永近に怒られているところだ。
思葉は小声で謝りそうっと硝子戸を閉めて息をつき、奥行きのある店内を振り向いた。
「ごめんくださーい」
中央に位置する目貫や鍔などの刀装具を並べている背の高い棚が、細い通路を二つ作っていた。
左側を通り、鍵付きの硝子棚に飾られている刀を眺めつつ歩くと、その先には上がり框を少し改造した三畳ほどの番台がある。
その後ろの木戸がからからと開き、丸眼鏡をかけた老人が出てきた。
彼が店主の青江である。
青江は思葉を見ると、目を細めて優しげに笑った。
「いらっしゃい、待っていましたよ」
「こんにちは、青江さん。
今日はお時間を取ってくださってありがとうございます。
あの、これ、良かったら食べてください」



