嫌な予感がしてそちらに顔を向けると、隣に並んでいる乗用車の助手席に座っている中学生くらいの少年が、いぶかしげに思葉を見ていた。
ハンドルを握る父親も似たような表情をしていたが、やはり目が合うとすぐに前を向き、タイミングよく青信号になったので発進させる。
思葉は顔が真っ赤になるのを感じた。
なぜだか泣きそうになったのをぐっとこらえてペダルを踏みこみ、表通りから脇道に逸れる。
「あっ、思葉、なぜあの通りから離れる、おれはまだじっくり見ていな」
「うるさい、ちょっと黙ってて。てかもう喋らないで」
「な、なんだ突然」
「あんたのせいであたしが変人扱いされたのよ」
「なんだその言い草は、おれのせいなのか?」
「それ以外に誰がいるって言うの、あんたの相手をしていたせいだからね!」
「おまえが必要以上に大声で話すのが悪いのだろう」
「なにそれ、あたしが悪いって言いたいの!?」
つい思葉が噛みついたとき、すれ違った大学生くらいのカップルが振り向くのを感じた。
また一人で喋る変な女だと思われてしまった。
思葉は眉間にしわを寄せ、「不機嫌です」と一目で分かる表情でさらにペダルをこぐ。
流れる景色に驚いたりまだ質問したりする玖皎の声を一切無視しながら、厚手の革製の袋に入れてくれば良かったと後悔した。



