妖刀奇譚






「こんなことで驚いてたら、表通り走ってたら気絶するかもしれないわね」


「おっ、表通り?」


「あんたがいつも窓から眺めているところ、もう出るよー」



建物の影で薄暗い路地裏から、日当たりの良い表通りに出る。


南北に走る道なのでこの時間は特に明るく眩しいくらいだ。


休日だからか行き来する車の量も歩行者の数も多い。


どこにでもある、極めてありふれた街角の風景。


玖皎は無言だった、絶句していたのだ。


さほど気にせず思葉は路側帯に出て目的の店がある商店街へと向かう。


赤信号で止まったところで、玖皎は堰をきった ように喋り始めた。



「こっ、思葉!かように様変わりしていたとは聞いておらぬぞ!」


「あんた毎日窓から見てるじゃん」


「見ているだけと実際に行くのとは大違いだ。


まさか本当に鉄の塊が馬よりも速く駆けることができるとは……おおっ、本当だ、中に人間が乗っている。


ええと、この車の名前は……」


「それは自動車だよ」


「そうだそうだ、自動車というものだったな!」



玖皎は隣に並んだ乗用車に興味津々な様子だ。


だが、その興味もすぐ別のところへ移る。