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「行ってきまーす」
杜若(かきつばた)色の太刀袋にしまった玖皎を背負い、思葉は勝手口から外に出た。
しっかり鍵を掛けて、蔵の脇に停めてある自転車に跨る。
「……ねえ、あんた本当に見えてるの?」
「ああ、見えてるぞ」
ペダルに片足をかけ、思葉はすっぽりと収まっている太刀の柄あたりを見た。
唇をとがらせて首をかしげる。
「ずっと気になってたんだけど、あんたの目や耳って一体どこについてんのよ?」
「おれに聞くな、おれ自身よく分かっていないんだよ。
が、珍妙な車に跨っている間抜けなおまえの面はしかと見えているぞ」
「いろいろ余計だし失礼、じゃあ出発するわね」
スマホの地図アプリを開いて場所を確認し、思葉はペダルに掛けた足に力を込めた。
自転車をこぐには少し寒いが、昼間なのでまだ我慢できる。
「おおおっ!?」
走り出した自転車に驚いた玖皎の声が聞こえる。
予想していた反応に笑いそうになったが、どうにかこらえて思葉は少しいじわるに言った。



