妖刀奇譚






「ねえ、玖皎」


「うおっ、どうした、いきなり大声出して」


「今おじいちゃんと話してたけど、午後から刀剣を取り扱っているお店に行くから」


「それは……青江というやつのことか?」


「そうだよ、青江さんのお店は刀の修理や装飾品……えっと、拵え(こしらえ)だっけ、とかの販売をしているの。


しかも青江さんは刀匠でね、自分が鍛えた刀も販売しているし、拵えの付け方も丁寧に指導してくれるんだ。


ほら、玖皎の柄のところ、すごくボロボロでしょ?


だから新しいのを買いに行くついでに、柄巻のやり方や手入れの仕方を教わりに行くの」


「ほう、この時代にも刀工がいるのか」



玖皎が感心したように息をついた。


すると1階にある柱時計が、少しだけ古めいた音を12回鳴らす。


いつの間にかもうお昼だ、早く支度をしなければ約束の時間に間に合わなくなってしまう。


思葉は本を棚に戻し、学習机にある小物入れから髪ゴムを取って手早くポニーテールにした。


着替えよりも、昼ごはんの用意が先である。



「じゃあ、午後から行くから準備しておいてね」


「準備って、おれに言うことか?」


「心の準備ってことだよ。


チャリで行くけど、あんたじっくり外の景色を見たことなかったでしょ?


びっくりしすぎて気絶しないようにしてよ」


「ばぁか、そう簡単に驚くかよ」



玖皎が呆れた調子と余裕あり気な調子を混ぜたような声音になった。


外に出たらこの態度はどれほど変化するだろうか、にっと笑って思葉は廊下に出る。



(……これって、來世の言う『遊びに行く』ってことになるのかしら?


これが何かのきっかけになるといいな)



頭の隅でそんなことを考えながら、階段を駆け降りた。