妖刀奇譚






「ちぇっ、なぁんだ、ようやく常時ツンドラな幼馴染のところにも春が舞い込んで来たのかって期待したのに」


「あんたがいつでも花咲きまくってるだけでしょ、しかも毎回散りまくるやつ」


「うわっ、さり気なく人の傷口抉りやがった」


「人が真面目に聞いてるんだから真面目に答えてよ」



思葉がイライラした口調になったので、來世は大げさに肩をすくめて舌を出した。


鼻と上唇で器用にマーカーを挟み、腕組みをして考える。


が、すぐに頭をがしがし掻いて欠伸をした。



「思葉はそいつと仲良くなりたいのか?」


「仲良くっていうか……線引きされてるみたいで気まずくなっちゃう、のを何とかしたいなとは思ってる。


向こうは気にしてないみたいだけど、あたしが変に意識しちゃうから」


「うーん……おれだったら、どうもしねえかな」


「は?」



空いたグラスを回収しながら呟いた來世に思葉は目を丸くする。


來世はテーブルの脇、カウンターの付いた小洒落たキッチンに移動して冷蔵庫を開けた。



「相手が線引きするってことはさ、それ以上踏み込まれたくないって意味だろ?


おれにもあるし、思葉にだってあるだろ、そういうの。


その線を無視して付き合うのはエチケット違反だよ」