妖刀奇譚






一旦立ち止まって振り向き、追いかけてくる玖皎を見て思葉はまた笑った。


もしもあの花言葉が、そのまま玖皎の想いを表しているのだとしたら。


こんなに嬉しいことはない。



(それならあたしも、あたし自身を護れる力を身に着けなくちゃ。


今まで玖皎の主人になってきた人たちみたいに、あいつの前からいなくなってしまわないように。


もうあいつに、あんな悲しい想いなんてさせたくない)



石段のところに戻り、思葉はもう一度スマートフォンの画面を表示した。


玖皎がすぐそこまで来ていたので電源を落とす。


追いついた玖皎に質問され、スマートフォンを取られそうになったので、どちらも躱しながらアスファルトの道を目指す。


何が何でも聞き出そうとしてくる玖皎を見て、花言葉を知ったときの彼の反応を想像してみて、思葉はこみあげてくるおかしさを笑声にして吐露した。


少女の笑い声と青年の怒ったような声が、鶯のさえずりと混ざって山に響いた。




雄大で堅実堅固な杉の葉。


与えられた言葉は――『あなたのために生きる』





自分も、彼のために生きてみよう。


千年の歳月を越えた、託された想いと共に。





    [花・完]