妖刀奇譚






一瞬だけ、時間軸の異なる風景が目の前に重なって観える。


こぢんまりとした神社を、真紅の彼岸花が囲んでいる。


風に撫でられて花が揺らぐ。


琴の姿が観えた。


彼岸花の一輪に触れ、放射状に開く花弁にそっと唇をつける。


刹那の映像が消え、元の何もない空き地に戻った。


思葉は瞬きを数回して、つ、と玖皎を見上げた。


動きに気づいた玖皎は主人を見下ろす。



「ねえ、玖皎」


「なんだ」


「彼岸花の花言葉って知ってる?」


「はなことば?家に持ち帰ると火事になるとか、摘み取ると手が腐るというやつか」



(あれ?摘んだら死人が出るんじゃなかったっけ?)



思葉は疑問に感じたが、話がややこしくなるので黙っておくことにした。



「それは彼岸花の見た目と毒に関連した迷信だよ。


花言葉というのはね、トルコって国の『花に思いを託して相手に贈る』という風習がもとになって、その植物に対するイメージからつくられた言葉なの。


例えば薔薇なら『愛情』、椿なら『誇り』って具合にね。


同じ花でも色によって言葉が全然違う花言葉になることもあるんだよ」


「なるほど。それで、曼珠沙華の花言葉とは?」


「『独立』とか『再会』、『あきらめ』、『悲しい思い出』って、やっぱり何だか暗いものが多いんだけど……」