妖刀奇譚






「思葉ちゃん?」



黙り込んだ相手に、轉伏が首を傾げる。


思葉は一旦視線を床に這わせてから、もう一度2人の阿毘を見遣った。



「ごめん……正直、器とか、不相応とか、よく分からない。


だけど、玖皎が道を踏み外すようなことには絶対にさせないよ。


あいつが道を間違えそうになったら、殴ってでも目を覚まさせて引き戻すわ。


あいつに何かあったときはあたしが助ける……護られてばかりは嫌だから」



彼らの言うように、自分に力はないかもしれない。


でも、それで諦めたくはない。


自分にできることがあるなら、それに精いっぱい努めたい。


それが一体何なのかは、まだ分からないけれど。


青鬼の面は静かに思葉を見ていた。


あれだけ騒いでいた赤鬼の面も黙っている。


やがて、轉伏が小さく笑って肩を竦めた。



「……あの妖刀が君を選んだ理由、なんとなく分かるな。


君が観えるとか観えないとか関係なくね。


まだ心配だけど、とりあえず、君からその言葉が聞けたなら少しは大丈夫かな。


彼はぼくたちの担当だから監視しておいてあげるけど……人間を襲ったら、そのときは容赦なく斬るからね」


「絶対に、そんなことさせない」



刀の柄に触れる轉伏を見据えて、歯をかみしめるように思葉は言った。