「むぐっ!?」
珒砂が喉に何かを詰まらせたような声をあげ、お面の口のあたりを必死で引っ掻き始める。
そんな状態の彼を放っておいて、轉伏は思葉の方を向いた。
「まあ、でも、珒砂の言う通りだよ。
霧雨玖皎は君の式ではないし術でもないけど、彼の手綱を握る役目は君にある。
姿かたちが人間に観えても、その中身はまったくの別物だからね。
それに彼は付喪神という妖怪でありながらも、神の末席と等しい通力を持っているんだ。
万が一安倍晴明の術が破れて彼の本性が露わになったら……君なんか一瞬で殺されちゃうかもよ?
彼は荒ぶる神かもしれないしね」
轉伏の語調は優しいままだったが、突然、そこに抜き身の刀のような鋭利さが含まれた。
思葉は生唾を呑みこみ、にこやかな赤鬼の面を見つめる。
「ごめんごめん、怖がらせるつもりはないんだ。
ただそういうことがあるかもよってことを、君に覚悟していてもらいたくてね。
君って、よく感化されやすいくせに、こっちが心配するくらい非力で無防備な女の子だからさ。
知らないでいるより少し知っておいた方が、これからの構えも変わってくるでしょ?
まあ、霧雨玖皎が道を踏み外したときは、君に被害が出る前にぼくたちが処罰するんだけど」
人間と妖怪とは、相容れない部分がある。
それを失くすために術をかけられたのだと玖皎は言っていた。
玖皎が人と同じ部分を失ったとき、自分はどうするのだろうか。
人をむさぼるものと化してしまったとき、自分には何ができるのだろうか。



