やり返しのつもりか、珒砂が轉伏のがら空きの腹部に蹴りを叩きこむ。
先ほどからやっていることがいちいち暴力的だ。
地獄の鬼となると、やはりそのあたりの感覚は人間と異なるのだろうか。
などと考えていると、珒砂の人差し指が思葉に向けられた。
長く鋭い爪が鬼らしい。
「おい皆藤思葉、おまえはあの妖刀の主になったんだな」
「え?あ、うん」
「知っているとは思うが、あの妖刀はそこらに転がっている下等妖怪とは桁が違う。
名前の通り、神の部類に片足を突っ込んでいる妖怪だ。
修行も積んでいないおまえが制御できるようなやつじゃねえ。
あいつはおまえの器よりもずっとでかくて深い、分不相応だってことを重々承知して」
「珒砂、ストップ」
再び轉伏のげんこつが珒砂の脳天に降る。
さっきよりも強いらしく、痛そうな音が鳴った。
「怖がらせるような言い方してどうするんだよ、それだから女鬼たちにもモテないんだってば」
「うるせえ、今その話は関係ないだろう」
「ああ、やっぱりぼく独りで来るんだったよ。
話が進まないからちょっと黙っていようね、珒砂くん」
言いながら轉伏が袖口から一枚の札を取り出した。
何かの象形が書かれている。
思葉には聴きとれない言葉で呪を唱えると、札は珒砂の鬼面をすりぬけた。



