教室のドアは閉めてあるので、誰か入ってくれば思葉でも気づく。
それに、何の物音も立てずに教室に入るようなことが、生きている人間にできるはずもない。
あそこに居るのはそういう者だ。
思葉は直感で分かったが、不思議とそこまで怖いとは思わなかった。
「あの……もしかして、さっきあたしを見てたのって、あんたなの?」
ちっ。
(舌打ち!?)
真っ先に返ってきた暴力的な返事に思葉はびっくりする。
「本当に観えるようになってんのかよ……悍染さんの言うとおりじゃんか。
やめてよな、どいつもこいつも、またおれらの仕事が増える……」
「珒砂」
別の声が聞こえる。
瞬きをすると、青鬼面の少年の隣に赤鬼の面をつけた少年が顕われた。
青鬼面の少年の頭を、遠慮ない力でひっぱたく。
「会って早々怖がらせちゃ駄目だろ?
あの子はぼくたちの存在をほとんど知らないんだからね」
「だからって殴ることねえだろが、少しは加減し」
「皆藤思葉ちゃんだよね、初めまして。
ぼくは轉伏、こっちは珒砂、今ちょっと虫の居所が悪いだけだから、怖がらなくても大丈夫だよ、噛みついたりしないから」
「おい無視すんじゃねえ、てか、おれを畜生扱いすんな!」



