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昼休み、思葉は図書室から教室へと戻っていた。
狙っていた本がタイミング悪くほかの人に借りられてしまったので、早々に退散してきたのである。
午後の授業までまだ時間があるので、購買へ行こうと踵を返した。
「……ん?」
その途中、視線を感じて足を止める。
PCルームや教材研究室、社会科学習室などの特別教室が並ぶ廊下だった。
視線はその奥の方から感じた。
いつもなら気のせいだと思って無視するが、今日はなぜか足が向いた。
にぎやかな雰囲気を遠くに感じる廊下を進み、思葉は突き当たりにある音楽室のドアに手をかけた。
施錠しておらず、ドアは難なく開く。
広い室内には誰もいなかった。
思葉はきょろきょろ見回し、戸惑いながらドアを閉めて中へ入る。
やはり誰もいない。
部屋の中央に鎮座するピアノの傍まで来て思葉は振り返った。
「誰?」
少し怖くも思ったが、とりあえず呼んでみる。
「誰かいるの?」
やはり返答はない。
ただの気のせいだったか……首をかしげてピアノから離れたとき、視界の端に人の姿が映った。
あわててそちらを向くと、いつの間にか、そこには青鬼の面をつけた少年が立っていた。



