妖刀奇譚






太刀は黙したままでいる。


永近は足を組み替えて胡坐をかき直すと、アイスティーの色をした瞳を細めた。



「なあに、心配は無用じゃ、出てきたおまえさんを祓おうなどと思っておらぬ。


ほれ、術も符呪も持ってないだろう。


それに、孫を護ってくれたおまえさんを祓う理由がどこにあるか」



両手を広げて、永近は戦う意思がないことを示す。


再び流れる沈黙。


その途中で、玖皎は太刀の隣に姿を顕わした。


目を開き、改めて前に坐している老人を見つめる。



「ほう、これはまた立派な……。名は何と?」


「霧雨玖皎だ」


「霧雨玖皎、よい響きの名じゃな。


なるほど、思葉がおまえさんを気にしていた気持ちもわかる。


おまえさんは本物の人間のようだからな。


おっと、まだ名乗っていなかったな、失礼した。


わしは満刀根永近、思葉の祖父だ」


「……おまえ、おれが観えるのか?」



玖皎は顎を引いて警戒するように永近を見た。


老人は笑って頷く。



「ああ、観えておるとも」


「声も聴こえているな」


「無論じゃ、おまえさんが思葉とよく話しているのも聴いておったぞ。


……ほほう、その反応だと、わしに見鬼の力がないと思っていたようだな」


「おまえの孫がそう言っていたからだ」