妖刀奇譚






「この家の主人、おまえは見下しているようだが、やつはそうたやすい存在ではないぞ。


何せ、過去に阿毘と接触したことがある男だからな」


「なに?」



轉伏が短い呪を唱える。


すると、思葉の部屋を囲んでいた結界が取り払われた。


悍染たちの姿が消え、外の音が戻る。


玖皎はとっさに人型の実体を解き、意識を太刀へと戻した。


直後、ドアノブが回り、永近が現れる。


永近は何かを探すように入り口で室内を見回していたが、やがて玖皎に目を向けると部屋に踏み入った。


テーブルを脇に寄せ、空けたスペースに胡坐をかいて座り、玖皎をじっと見つめる。



「……ふむ、以前よりも妖気が増しているようだが、安定しておるな、よい機会にでも巡り合ったのかのう。


なるほど、店の結界が壊れていたのに、あそこから何も出ようとしないのはおまえさんのおかげか。


あそこに居たものがきれいに居なくなっていたのもか?」



永近は口元に笑みを含ませる。


眼鏡を外してテーブルに置き、改めて太刀に優しげな視線を送る。



「わしが居ない間に、孫が随分と世話になったようじゃな。


そう硬くならずに出て来てはくれぬか?


わしがここを離れる前は声しか出せぬ様子であったが、その分だと人の姿を得たのだろう?」