「霧雨玖皎」
悍染が厳かな口調になった。
阿毘の2人もふざけることはせずに姿勢を正す。
「かつて、おまえは己の私利私欲のために人間の霊魂を貪った。
そしてこの千年間、おまえは人間の武器としてさらに多くの血を吸い、その命を奪ってきた。
本来ならば、今この場で我々に討伐されてもおかしくないほどの大罪だ」
玖皎の脳裏に、様々な映像が瞬間的に流れる。
これまで玖皎が殺してきた者たちの姿、その死に様だ。
護りきれなかった主人たちのものもある。
その中には琴の姿もあった。
「だが、おまえが人間に振り回されていたときに殺したのは、おまえの意思ではないことは分かっている。
おまえが主人を護り通そうとひたすらに望み、それが叶わずにいることもな。
このことは閻魔王もご存知だ。
だから……今のおまえの主、皆藤思葉を護り通してみせろ」
ふいに、悍染の物言いに煽るような響きが混ざった。
玖皎が顔を上げると、案摩の面で隠された顔が少し笑ったように動いた。
「あの娘は観聴きする才は図抜けているが、その護りは全くといっていいほどない。
だからおまえが楯となってあの娘を護ってやれ。
おまえは護り刀なのだろう……本当に主人たちを護りたかったと思うのなら、あの娘を護り通せ。
そうして、おまえの誠意をおれたちに証明してみせろ」



